震災とこれからのマーケティング

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3月11日。

遠く我々の事務所を構える大阪でもそのとき、緩やかで長く奇妙な揺れを感じました。

それから早や一ヶ月が過ぎ、日々のトップニュースはこの大震災に関係したことが大半を占めてします。

そのような状況ですので、デリケートな話題にはなるのですが、避けることの出来ない様々な現象を感じずにはおられず、震災後に見えてきたこれからのマーケティングの動向について書きたいと思います。

本題に触れる前に、この度の東北地方太平洋沖地震により被害を受けられました皆様に心からお見舞い申し上げたいと思います。

さて、そのような未曾有の災害が襲う前の2月26日に、私はこのブログで『これからのマーケティング』と題した記事を書きました。そして、震災からこの一ヶ月間の動向を見ますと、その記事に書いたことが加速するかのように次々と動き出しているように感じます。

・企業などの売り手と、消費者が対等な立場になる
・消費者の直接的な利益以外にお金を払う
・企業側もお金以外の何かを消費者に求め
・持ちつ持たれつ的な関係を構築する

主には上記のようなことでした。
 

別に「ほら当たっただろう!」と自慢をするつもりはもちろんありません。

共感市場とでも言える動きは一昨年、昨年と徐々に広まりを見せていましたし、コトラーがマーケティング3.0で論じたように、自己実現論の最上位の欲求が企業のマーケティングに大きく関係してくることはひとつの流れではありました。

ちなみに、自己実現論というのは、マズローが人間の欲求を5段階の階層で理論化したもので、以下の5段階の欲求を段階的により高度な欲求を人間は求める、というものです。

この欲求に対し、1→5に向かうのではなく、本当は5が一番底辺にあるのではないか、とも論じられたりしますが、心理学のお話ではないので、そこは置いておいて、少なくとも今回の大震災の被害にあわれた方々は、いきなりこの5つ全てを失ったと言っても過言では無いと思います。

そしてその被害にあわれた方々への様々な感情が、企業のトップや芸能人やスポーツ選手など、社会的影響力の強い人や高所得者だけでなく、広く一般の人々も動かし、義援金であったり、ボランティア活動などに参加させ、その広がりと伝播の早さに驚きを感じました。

さらには、生理的欲求や安全の欲求といった初段階の欲求のケアだけでなく、より高い段階にあるメンタリティーな欲求にたいするケアも早くからニュースでも取り上げられていました。

風評被害や過度な買占めに対しても、消費者に毅然と対応する企業がある反面、放射能汚染という言葉に便乗した商売をする店や、これだけ多くの団体や企業が協力や理解を求めても、身勝手な行動をする消費者の姿も報道されています。

先のブログ『これからのマーケティング』の記事では、消費者側も企業と同じレベルに立つ事が求められる、と書きましたが、身勝手な行動をするある意味姿の見えない消費者は、企業にとって脅威であったと思います。これが企業ではなく人間であったらば、恐らくはケンカになっていたかもしれません。
買占めと思われる客にレジを通すのが辛かったという話もありました。

また、風評被害を受けている産地の野菜などを正しい情報の元、販売する販売店と、また少しでも被害にあっている方々の助けになるのならと、そのような品を購入する消費者の姿も報道されました。

身勝手というのは共感を得られないということと同じ意味です。

企業と消費者が共感し、共存の道を探っていくというのがこれからのマーケティングの大きなテーマでしたが、今回の震災でその動きが大きく加速したと思います。

もちろん、このような動きは後戻りするようなものではありません。
もっともっと広がりと浸透を見せていくことでしょう。

そして、モノと心のより早い復興を祈るばかりです。

プランナー:竹田